レーセル帝国物語 皇女リディアはタメグチ近衛兵に恋しています。

「さあ?オレも聞いてないなあ。もしかすると,お前には話せない理由だったのかもな。たとえば再婚話とか,お前の縁談話とか」
「ええっ!?」
どちらにしても,リディアには嬉しくない理由である。デニスと両想いになった今,もう縁談の話は聞きたくないし,父イヴァンは亡くなった母をそれはそれは愛していた。なので,皇后亡き後の十三年間で,再婚話は一度も出たことがない。リディアも,父が(あら)たな皇后を迎えるなんて想像がつかない。
「たとえばの話だって。まあ,陛下が直接話して下さるんじゃないかな」
「そうね」
自分達だけで色々邪推(じゃすい)しても仕方ない。本人の口から聞くのが(もっと)も確実だろう。
「――それはともかく,ジョン。お前のその大剣,結局何の役にも立たなかったな」