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――海の幸をふんだんに使った料理をお腹いっぱい食べ,三人が馬に跨ってシェスタの町を後にした頃,西の空では日が傾き始めた。
「お城に着く頃には,お父さまはもうお帰りになっているかしらね?」
「だろうな。陛下の方が,オレ達より先にお着きになってるはずだ」
懐中時計を覗きながら呟くリディアに,デニスが答える。
「それにしても,お父さまは一体どんなご用でスラバットまで出向いたのかしら?」
父が隣国へ旅立った理由を,彼女は聞かされていない。大臣も,侍女も,城の使用人達も誰も教えてくれなかった。ただの「外交」だとしか。



