「――あの,姫様」 不意に,すぐ側から中年女性の声がした。 「まあ,おかみさん!どうなさったの?」 声の主は,昨日から泊っている宿のおかみだった。 「ええ。実は,この町と故郷を救って頂いたお礼にと,ごちそうを用意したんです。まだお帰りにならないんでしたら,昼食に召し上がって行って下さいな」 「えっ,いいんですか?」と目を輝かせたのは,言うまでもなくデニスである。 リディアとジョンも彼を一睨(ひとにら)みしつつも,「じゃあ,お言葉に甘えて」とご相伴(しょうばん)にあずかることにした。