レーセル帝国物語 皇女リディアはタメグチ近衛兵に恋しています。

ジョンの言い方は,何とか自らを納得させようとしているように,リディアには聞こえた。
彼にとってはどちらも大切な人だから,二人のために身を引こうとしているような気がして,彼女はチクリと痛む胸を押さえる。
「姫様,俺のことは気にしないで下さい。俺は,大丈夫ですから」
「ジョン……」
「俺のあなたへの忠誠心は,こんなことくらいでは揺らぎませんから」
(本当に,忠誠心だけの問題なの?あなた自身の気持ちは?)
リディアは心の中でこそそう思ったが,声に出して訊ねることはできなかった。
彼はきっと,言わないから。それなら,あえてリディアの方から問うのは野暮だ。
「分かったわ。これからも,我が国のためにわたしに忠誠を尽くしてちょうだいね」
「はい,姫様!」