レーセル帝国物語 皇女リディアはタメグチ近衛兵に恋しています。

「あなた方には即刻(そっこく),プレナ及びこの国からの退去を命じます。拒否した場合は,帝国法に(のっと)ってあなた方を処刑します。これ以上,人々を苦しめることは許しません!」
皇女――いや,次期皇帝の威厳と剣幕を前に,ついに海賊の頭は降伏(こうふく)した。
「わ,分かった!俺達が悪かった!おい,お前ら,今すぐ撤退だ!」
命じられた子分からは「えっ!?しかしお(かしら)……」という声がいくつか上がったが。
「いいから撤退だ!処刑されてえのか!?」と頭に怒鳴られれば,子分達も従うしかない。みんな命は()しいのだ。
港から海賊船が見えなくなると,シェスタの町は嵐が過ぎ去ったように静かになった。
――いや,別の意味で賑やかになった,というべきか。