父に限らず,ジョンの一族は先祖代々,歴代皇帝の(もと)で将軍を務めてきた,レーセル帝国では知らぬ者のない由緒(ゆいしょ)正しき家柄なのである。ジョンもきっと,一族の名に恥じないように()()っているだけなのだろう。
――それはさておき。
「……まあ,今は敬語なしでも許してあげるわ。まだあなたはわたしに仕えてるわけじゃないし,今はわたしが剣を教わっている(がわ)。つまり,わたしは弟子(でし)なんだものね」
「えっ,いいのか⁉」
リディアが出した妥協(だきょう)案に,デニスは(またた)いた。思わず,声が上ずってしまう。
「ええ。ただし,成長して一人前の兵士になった時には,その横柄な態度は即刻(そっこく)(あらた)めてもらいます。――いいわね?」
ニッコリと含みのある()みを向けられたデニスは,一瞬(ひる)んだ。けれど,すぐさまいつもの不敬(ふけい)な調子に戻り,頷く。
「分かったよ。そん時は,ちゃんと改めるから。……おいおい,そんなに(にら)むなって」