レーセル帝国物語 皇女リディアはタメグチ近衛兵に恋しています。

頭のクラクラがおさまったリディアは,ライティングデスクの椅子に腰かけて一息ついた。酔いが()めたらしいデニスも,ベッドからムクッと体を起こす。
「――で,どうしたんだよ?」
彼は改めて,リディアに夜遅くに自分達の部屋を訪ねてきた理由を問うた。
「あのね,さっきわたし,おかみさんの寝室を訪ねたのよ。プレナで今,一体何が起きているのかを訊くためにね。そしたら……」
リディアはそう話を切り出し,おかみから聞き出した情報を,二人の兵にも話して聞かせた。
プレナは海軍に力を入れていないから,海賊相手には手も足も出ない――。その事実を知り,デニスとジョンにも合点(がてん)がいったようである。
「なるほど……。だからプレナの国王陛下は我が国の海軍に動いてもらおうと,使いを送られたのですね」
「ええ,そうみたいだわ。でも,タイミングが悪かったわね……」
リディアはジョンの言葉に頷き,残念そうに肩をすくめた。軍を動かす権限を持つ皇帝が不在の時に使いを送っても,何の解決にもならないのだから。
「せめて,わたし達三人だけで何かできることがあればねえ」