「――それで姫様,イヴァン陛下はこのことについて何と?」
おかみは縋るような思いで,リディアに問うた。皇帝の鶴の一声で,海軍は動く。それを期待して,彼女は皇女に訊ねたのだろうけれど。
「申し訳ありません,おかみさん。父は一昨日から隣国のスラバットに出向いていて,明日にならないと戻らないので,プレナの件はまだ父の耳には入っていないんです」
「そうですか……」
おかみはガックリと肩を落とした。その顔には絶望の色さえ窺える。
(まったく,お父さまったら!こんな緊急時に呑気に外交なんて!)
リディアはこの夜初めて,父に対して怒りの感情を覚えた。もちろん政治のうえでは,外交も大事だということも分かっている。けれど,おかみの縋るような眼差しと絶望的な表情を見ていたら,今はそんなことはどうでもいいとさえ思えてくるのだ。
だからこそ,リディアは彼女に希望を持たせるように,こう言った。
おかみは縋るような思いで,リディアに問うた。皇帝の鶴の一声で,海軍は動く。それを期待して,彼女は皇女に訊ねたのだろうけれど。
「申し訳ありません,おかみさん。父は一昨日から隣国のスラバットに出向いていて,明日にならないと戻らないので,プレナの件はまだ父の耳には入っていないんです」
「そうですか……」
おかみはガックリと肩を落とした。その顔には絶望の色さえ窺える。
(まったく,お父さまったら!こんな緊急時に呑気に外交なんて!)
リディアはこの夜初めて,父に対して怒りの感情を覚えた。もちろん政治のうえでは,外交も大事だということも分かっている。けれど,おかみの縋るような眼差しと絶望的な表情を見ていたら,今はそんなことはどうでもいいとさえ思えてくるのだ。
だからこそ,リディアは彼女に希望を持たせるように,こう言った。



