「ええ,私の故郷です。二十年前にあの国から,ここへ嫁いできたんですよ」
「二十年……ですか。あの国が今,大変なことになっているのはご存じですか?」
リディアはそう訊いたが,この女性は多分知っているだろうなと思った。
「ええ,知っています。故郷の家族が,手紙で知らせてくれましたので」
「そうですか。ご心配でしょうね」
彼女はきっと,この窓から毎日,海の向こうの祖国を眺めては,故郷に残っている親族に思いを馳せ,無事を願っているのだろう。
「――あ,そうそう!パンのお代わりでしたね。おいくつ入れましょうか?」
おかみはリディアが厨房までやってきた理由を,やっと思い出した。
「ええと,二つ……で足りると思います」
「少々お待ち下さいね」
おかみはそう言って奥の食料貯蔵庫まで入っていくと,パンの塊を二つ,紙に包んで戻ってきた。この国のパンは,特殊な製造方法によってカビが生えにくいのだ。
「二十年……ですか。あの国が今,大変なことになっているのはご存じですか?」
リディアはそう訊いたが,この女性は多分知っているだろうなと思った。
「ええ,知っています。故郷の家族が,手紙で知らせてくれましたので」
「そうですか。ご心配でしょうね」
彼女はきっと,この窓から毎日,海の向こうの祖国を眺めては,故郷に残っている親族に思いを馳せ,無事を願っているのだろう。
「――あ,そうそう!パンのお代わりでしたね。おいくつ入れましょうか?」
おかみはリディアが厨房までやってきた理由を,やっと思い出した。
「ええと,二つ……で足りると思います」
「少々お待ち下さいね」
おかみはそう言って奥の食料貯蔵庫まで入っていくと,パンの塊を二つ,紙に包んで戻ってきた。この国のパンは,特殊な製造方法によってカビが生えにくいのだ。



