「……あなたの教え方がよかったからよ。いつも手加減なしで,熱心に教えてくれるから……」
リディアは「ありがとう」と,もう一度デニスに礼を言った。彼の熱意に(こた)えるためには,自分自身も本気でかからないと相手に失礼だ。
「――そういや,なんでオレに教わろうと思ったんだ?剣の腕なら,オレよりジョンの方が上なのに」
地面に刺さったままの自分の剣を引っこ抜きながら,デニスはリディアに()いた。
実際,剣術鍛錬所でもジョンの腕はずば抜けている。それこそ,デニスなんか足元にも(およ)ばないほど。
そのことは,この国の皇女である彼女の耳にも入っているはずなのだが……。
「ジョンは確かに腕は立つけれど,誰かに教えるような部類の人じゃないわ。それに,わたしはデニスに教わりたかったの。どうしても」
リディアはデニスの茶色い(ひとみ)を見つめて,そう言った。
彼女はもうだいぶ前から,彼に好意を寄せていたのだ。そして,彼もまた……。リディアはまだ気づいていないけれど。