レーセル帝国物語 皇女リディアはタメグチ近衛兵に恋しています。


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すっかり日が暮れ,聴衆達が広場から帰っていく。城から出てきた面々も,そろそろ引き揚げようとしていた。
「――お父さま,先に戻っていて下さい。わたしはもう少しの間,ここに残ります」
リディアが一人「残る」と言えば,一緒に残りたがる男が約一名。デニスである。
「じゃあ,オレも残るよ」
「デニス,あなたも先に戻ってて。()()()
最後の「お願い」にあえて(すご)みを利かせて言うと,デニスも逆らえないと悟り,やっと渋々だが「分かった」と頷いた。
引き揚げていく一団に目を()らし,彼女は目当ての人物――長身・金髪(ブロンド)の青年兵士――に声をかける。