『姫様がいてくれたら,この国は安泰だ』
『あなたが皇帝となれば,この国は今よりずっと栄えていくでしょうね』――
シェスタの町民や,カルロス王子の言葉がリディアの脳裏に蘇る。顔を上げた彼女は,胸が躍るのを感じた。
今見ているこの光景は,自分が皇帝として認められた証なのだ。この寛容な国民性が,リディアは幼い頃から大好きだ。
(そうよね,わたしは一人じゃないんだわ)
デニスがいる。ジョンがいる。ガルシアもステファンもいる。エマも,大臣も,城の侍従達も,兵士達もいる。父イヴァンだって,まだまだ元気でいてくれるだろう。
彼女は自身の身近な人々のことを想い,ここに集まっている国民達の姿を見つめた。
こんなに多く,自分を支持してくれる人々がいるのだ。きっと自分は,立派な皇帝になれる。何の根拠もないけれど,リディアはそう確信したのだった。



