レーセル帝国物語 皇女リディアはタメグチ近衛兵に恋しています。

「我が伯父・サルディーノの件では,多大な迷惑をおかけしてしまいましたね。重ねてお詫び申し上げます」
「いえ,そんな!頭をお上げ下さい!あなたが詫びる必要はございませんわ。あなたが一番の被害者なのですから」
必死に謝る隣国の王子――いや,もうすぐ国王か――を,リディアは慰める。
「私はあなたから忠告を受けなければ,スラバットも帝国も,危うく滅ぼしてしまうところでした。リディア様,このご恩は一生忘れません」
彼はまた,深々と頭を下げた。
「いいえ,わたしは何も,特別なことはしておりませんわ。全ては,あなた自身が決断なさったことです。今後は,あなたが国と国民を立派に守っていって下さいませ」
彼はこの先,国王として傾きかけたスラバットの国を建て直さなければならない。若き王にとっては(いばら)の道だろうが,彼ならきっと立派にやり遂げるに違いない。