「それって……,オレも知ってるヤツ?」
(あなたのことだってば)
リディアは隣りを歩く幼なじみをチラッと見遣り,こっそりツッコミを入れた。
この男は,昔からこと色恋に関しては鈍いのだ。リディアの自分への恋心にだって,未だに気づいているのか気づいていないのか分からない。
「……教えられません!」
けれど,彼女はそんなことはお首にも出さず,すっとぼけて見せた。
「――ところで,今日シェスタに行こうって言ったのはどうして?」
そして,唐突に話題を変える。
この時刻からお忍びで出かけるのなら,わざわざ馬を走らせてシェスタまで行く必要はなかったのではないか。レムルの城下町だけでも,もっと近い町でもよかったろうに。
「まあ,着けば分かるさ」
デニスはそう答えて,不敵な笑みを浮かべる。――シェスタには何かがあるのだ。
リディアにはふと,ある考えが浮かんだ。
城には先刻,プレナからの使者が来たばかりで,その国内で問題が起きていると聞いた。
(あなたのことだってば)
リディアは隣りを歩く幼なじみをチラッと見遣り,こっそりツッコミを入れた。
この男は,昔からこと色恋に関しては鈍いのだ。リディアの自分への恋心にだって,未だに気づいているのか気づいていないのか分からない。
「……教えられません!」
けれど,彼女はそんなことはお首にも出さず,すっとぼけて見せた。
「――ところで,今日シェスタに行こうって言ったのはどうして?」
そして,唐突に話題を変える。
この時刻からお忍びで出かけるのなら,わざわざ馬を走らせてシェスタまで行く必要はなかったのではないか。レムルの城下町だけでも,もっと近い町でもよかったろうに。
「まあ,着けば分かるさ」
デニスはそう答えて,不敵な笑みを浮かべる。――シェスタには何かがあるのだ。
リディアにはふと,ある考えが浮かんだ。
城には先刻,プレナからの使者が来たばかりで,その国内で問題が起きていると聞いた。



