レーセル帝国物語 皇女リディアはタメグチ近衛兵に恋しています。

「いいのか?オレが読んでも」
受け取ろうとしたデニスは,少しためらった。いくら恋人とはいえ,他人様(ひとさま)の手紙を読むのは気が引ける。
「ええ。手紙はレーセル語で書かれているから,あなたにも読めるはずよ」
本人がそこまで言うのなら……と,デニスは四つ折りにされた便箋(びんせん)を開く。
「――おー,こりゃスゴいな……」
最後まで一通り目を通したデニスは,言葉を失った。
「でしょう?一度も会ったことがないのに,どうしてこんなに情熱的な恋文(こいぶみ)が書けるのかしらね?肖像(しょうぞう)すら見たこともないのよ」
リディアは首を傾げた。父から聞かされた話だけでこの手紙が書けたのなら,カルロスという王子は相当な想像力の持ち主に違いない。