レーセル帝国物語 皇女リディアはタメグチ近衛兵に恋しています。

皇帝直々(じきじき)に労われ,デニスは深々と頭を下げた。
(なによ。わたしに対しての態度とは,ずいぶん違うじゃない!)
リディアは不満げだが,姫でも幼なじみの自分と国の主とでは違って当たり前なのかもしれない。
「さっきまで,ジョンも一緒でした」
リディアはシェスタ行きの経緯を,順を追って父に話した。そして,あの町で起きたことの顚末(てんまつ)も。
「――というわけで,プレナを(おび)やかしていた海賊問題も,わたし達で解決してしまいました。お父さま,勝手なことをして申し訳ありません。あれは,お父さまのお仕事でしたのに」
申し訳なさそうに詫びた娘を,イヴァンは「いやいや,構わぬ」と温和な表情で許す。
「そなたは次期皇帝として,自らの手で何とかしたいと思ったのであろう?ならば,立派な心がけだ。私に詫びる必要はあるまい」