今日、俺が死んでいたようで

どうしたんだろうか、後ろで犬でも流されたのか。羨ましいくらいに彼女は正義感が強いから。

彼女に声をかけてみたのだけれど、彼女はは驚愕した様子で荷物を投げ捨てた。
何か、信じたくない、そうとでも言っているようだった。

前のめりになるくらいの勢いで、若干こけながら私のほうに向かって走ってくる。



「また喧嘩を売りにき……」



体が透き通っていた。

椎名君は、私の体を通り抜けて川岸のほうへ走っていた。

可笑しい、体がやけに軽い。
体が、濡れていない。
なぜ、体が透き通っている?


そんなの、答えなんか簡単だった。

出ていたんだけど、なぜか認めたくない、そんな気がしたんだ。


「はッ……お前、なんでっ……」


俺と椎名くんはお互いに背を向けているから、彼女の顔も見ることは出来なかったし何が起きているのかもわからない。

後ろを振り向いてはならないと、直感が告げた。
けれども、振り向かなければいけないような気がした。

恐る恐る振り返った。


「おい!夜見!」


そこには


「っ起きろ!もう起きる時間はとうに過ぎている!」


ぐったりと


「ッ…」


横たわっている


「早くっ!マフィアに……!」


俺がいた。

ああ、死んだ。
死んだんだ。
やっと死んだんだ。


「あはは…」


空っぽな声が出てきた。
潤いがない、声だった。

あれ、可笑しいな。
嬉しいな、嬉しいなあ。
死ねたね、死ねた。
うん、やっと死ねたんだ。これで俺も自由の身。

__悲しいなあ。

やけに、寂しかった。

椎名君に手を伸ばしたのだけれども、椎名君を通り抜けた。
椎名君は、焦った表情で俺を抱えて、走り出した。
俺の存在には気づかなかった。


「ここにいるよ」


声すらも、届かなかった。


買い物袋から、美しい桜餅が転げ落ちていた。