彼を追いていくように足早に歩けば綺麗な桜が見えた


「あぁ、春だったっけ」


なぜか、先ほどまで忘れていた春のことも、片手にある缶珈琲もなぜか頭を熱くさせた。

まぁ、ぽつりと呟いて片手にある缶珈琲に一瞥を与えてから公園に置いてあるごみ箱にめがけて投げ捨てる。

からんと音がして、ごみ箱の中に入った。

まぁ、それもそうだろ。

風の強さ、距離、全てを計算して入れたのだから。

俺は、自称ではなく本当に周りの人たちから頭がいいねと言われている。

生まれつきの秀でた才能、という感じだろう。


なんて、呆気に思いながら俺の後を急いで追いかけてくる如月君にうっすらと笑いながら歩いていると目の前から綺麗な女性が歩いてきた。

しかし、思い人のほうが美しく見える。

これが恋心というもの。


「はは」


小さく笑っていつものおちゃらけた調子で女性の前で跪いてにこりと笑った。


「ああ、なんと美しいお嬢さん。まるで薔薇のようだ。是非とも共に手を取り体を川へ投げ捨てよう」


こういえば、適当にあしらわれることが多々ある。

だが、たまに名前を教えてくれることもある。


「……」


今日は、無理だったか。

特になんとも思わなかった。

しかし驚愕ともまた訳が違うのだけれど、冷めた目で見られているような気が結構する。

ずばずばと俺の心を抉ってくるその冷めた目に、思わず苦笑した。


「幹部ゥ!アナタははまた……」