【1】ー…


「遺産?」

「そう、親の。
法律で未成年後見人の施設長が管理してるんだけど、何かと理由をつけて使い込んでるみたいで…
どうしよう、このままじゃ退所する頃にはなくなっちゃう!」

「…わかった、何かいい方法がないか考えてみる」
少年は深刻な面持ちで答えると…



後日。


「結婚!?」

「うん、いつかはしたいと思ってて…
この際、ちょっと早いけど」

少女が16になる頃、少年は18で…
結婚すれば施設を退所出来るし、遺産もこちらに引き継がれる。


「…嫌?」

「ううん、ううんっ…
すごく、嬉しい」

涙をぼろぼろ零す少女を、少年は優しく抱きしめた。




ところがようやくその時を迎えると…
少年から思わぬ事実が告げられる。

今まで名乗ってた名前は義父に付けられた通称で、戸籍に記載されてる内容が真実だと。

他言出来ない複雑な事情があるらしく…
少女は愛する人の言葉を素直に信じた。


そして、無理やり通わされてた高校を辞めると。
義父の所から逃げたいという少年の希望で、入籍後は遠くに移り住む事になり…
その手配をする少年に、遺産の管理も任せる事になった。