寂しげな愛桜に、桜士も「そうだな」と寂しげな目をする。そして、二人は窓の外を見つめた。

二人はもうすぐ父の転勤の都合で引っ越すことが決まっている。行き先は大阪で、この町からは遠く離れている。

「まあ、次の学校でも問題なく俺らは過ごせるだろ。学校側も受け入れてくれたしな」

「……そうだね」

二人は真剣な目をして見つめ合った。二人には大きな秘密がある。その秘密のおかげで二人は学校中から注目されていた時もあったのだ。それはーーー。

「きゃあ!!」

女子生徒の悲鳴に、愛桜は声のした方を一瞬で見る。給食の配膳をする担当の女子生徒が揚げパンの乗った箱を持ったまま転ぶところだった。

「危ない!!」

二人は同時にそう言い、制服のポケットから杖を取り出す。そして呪文を唱えると、愛桜と桜士の杖からそれぞれ色の違う光線が飛び出した。

愛桜の放った黄色の光線は揚げパンの箱に当たる。光は優しく箱を包み、空中に飛び出していった揚げパンも回収して箱を給食台の上に置いた。