何も知らず 誰にも 触れられないまま 聡だけを 一途に 思い続けた啓子だから。


箱入り娘のまま 誰かに 傷付けられることもなく。


その愛を 受止めた聡は 分身のように 啓子が愛おしかった。
 


その年も バレンタインデーに チョコをあげた 啓子へのお返しに 聡は 指輪を買う。


一月後の ホワイトデー、啓子は 涙を流して 指輪を受取った。
 


「長かったでしょう、今日まで。でも 本当に長いのは これからだよ。ケイ ずっと宜しくね。」

と聡は 啓子の指に 指輪をはめながら言う。


啓子は 涙を流して頷く。



「今度の週末 啓子の家に 行ってもいいかな。」

聡は 啓子の 肩を抱いて聞く。
 

「うん。お父さん びっくりするよ。」

涙を拭いながら 啓子は答える。