説明を聞いた、あたしは、おせんに連れられて、楼主のとこに行った。
おせんは、楼主の部屋の前で、軽く、身なりを整え、あたしのも整えた。
そして、楼主に声をかけた。
「おはようございます。
おせんです。
新しい子を連れてきました。」
すると、部屋の中から、声がした。
「おせんか。
入れ。」
部屋に入ると、般若の顔した人が居た。
あたしは、怖くて、おせんの後ろに隠れようとした。
だけど、おせんは、あたしを隣に座らせ、隠れられないようにした。
「この子が、今日入った子です。」
「ほう…。
名前は?」
「名前のことは、まだ、話しておりません…。」
「じゃあ、わしが、決めよう。」
楼主は、腕を組み、悩んだ。
「か…、か…、かがり…。
かがりってのは、どうだ?」
「かがり…。
良い名前じゃないですか。
ねぇ、かがり?」
「はい。」
あたしは、返事した。
「お前は、今日から十四まで、かがりだ。
十四から十六までの間の名前と、十六からここをでるまで使う名前は、また考えよう。
それから、本当の名は、ここを出るまで、使うことはねぇ。
覚えておけ。」
「はい。」
あたしは、返事した。
「かがり、引っ込み禿の話は、聞いたか?」
「はい。」
「習い事のことは?」
「まだです。」
「そうか。
じゃあ、教えてやろう。
禿は、外に習い事をしに行く。
引っ込み禿は、わしが、教える。
だから、掃除が終わったら、わしのとこに来い。」
「掃除ですか…?」
「そうだ。
何だ、一日の行動を教えてもらってないのか?」
「はい…。」
「そうか。
教えてやろう。
起きると、風呂。
次に、朝飯。
飯の用意は、引っ込み禿は、しなくていい。
飯の後、みんなで掃除し、その後、禿は、習い事に出かけ、引っ込み禿は、わしのとこに来る。
習い事が終わると、夕飯。
禿が用意してくれるから、それを食べる。
食べ終わると、寝る。
これが、一日だ。」
「分かりました。」
「おせん。
ゆきの達に挨拶させておけ。」
「はい。」
おせんとあたしは、楼主に挨拶して、部屋を出た。
「じゃあ、まず、この見世で、一番偉い人に会いに行く。
ゆきの太夫と言って、ゆきの太夫と呼ぶか、ゆきの姉さんと呼ぶか、どっちかで呼ぶんだよ?」
「はい。」
「他の姉女郎のことも、姉さんと呼ぶんだよ?」
「はい。」
「姉さんと呼ばなくていいのは、禿だけだよ。
いいね?」
「はい。」
おせんとあたしは、二階に上がり、一番奥の部屋の前で、おせんは声をかけた。
「ゆきの。
新しい子が入ったから、挨拶させたいんだけど、いいかい?」
「いいよ。」
「じゃあ、失礼するよ。」
あたしとおせんは、部屋に入った。
そこに居たのは、色白で、たれ目で、唇が薄く、左の涙袋にほくろがある、優しそうな人だった。
「綺麗な子が入ったじゃないか。」
「そうなんだよ!
飛んだ掘り出し物さ。
さぁ、挨拶しな。」
あたしは、おせんの隣に座って、挨拶した。
「今日から入りました。
かがりと申します。
よろしくお願いします。」
「ゆきのよ。
よろしくね。」
ゆきのは、挨拶したら、あたしに、手招きをした。
「おいで。」
あたしは、少し、近付いた。
「ふふ…。
もっと、近くにおいで。
わたしの膝においで。」
あたしは、恐る恐る、膝に行った。
「ふふ…。
緊張しているね?
そうだ!
菓子をあげよう。」
ゆきのは、菓子を一つ取った。
「これはね、最中の月と言って、有名な菓子だよ。
さぁ、お食べ。」
「はい。
ありがとうございます。」
あたしは、一口食べた。
口の中に広がる、甘さと美味しさ。
「わぁー…。
甘くて美味しい…。」
ゆきのは、あたしの反応を見て、微笑んだ。
あたしは、最中の月を食べて、にこにこしていた。
「いい顔だね。」
「ありがとうございます。」
あたしは、照れた。
菓子を食べ終わると、挨拶をし、部屋を出た。
「次は、格子太夫と言って、二番目に偉い人達に、挨拶しに行くよ。」
「はい。」
次に来たのは、格子太夫の水連のとこに行った。
「ここだよ。」
「はい。」
あたしとおせんは、水連に許可取って、部屋に入った。
水連は、細い一重のたれ目で、口元左下にほくろがあって、色白だった。
「水連、今日入った子だよ。」
「かがりと申します。
よろしくお願いします。」
「水連よ。
格子太夫の中で、一番年上よ。
よろしくね。」
水連は、微笑んだ。
あたしとおせんは、水連に挨拶し、部屋を出た。
次に行ったのは、ひさのの所だった。
ひさのは、きつね目で、ぷっくりした唇で、色白だった。
次に行ったのは、あおはのとこだった。
あおはは、大きくくりっとした目で、幼く見えた。
「次は、新造に挨拶するよ。」
「はい。」
新造のとこに行った。
新造の部屋に入って、挨拶した。
「私は、みつば。
よろしくね。」
みつばは、振袖新造で、一重のきつね目の人だった。
「わたしは、つつじ。
よろしく。」
つつじは、振袖新造で、細目の一重で、右の涙袋と頬に
ほくろがある人だった。
「あたいは、みずはだよ。」
みずはは、留袖新造で、一重の切れ長の目で、綺麗な顔立ちだった。
「わたしは、かずは。」
かずはは、留袖新造で、一重の切れ長の目で、右頬に、ほくろがある。
「あたしは、ゆいな。」
ゆいなは、振袖新造で、二重のくり目で、左頬にほくろがあった。
次に、あたし達は、下に降りた。
「ここが食堂。」
そう言うと、食堂の中に向かって言った。
「引っ込み禿が、今日から入るから、食事の準備するんだよ!」
中から、返事が返ってきた。
次は、禿を紹介してもらった。