25話「新たな分かれ道」



 「やはり驚かせてしまったかな?」


 驚きすぎて言葉が出なくなってしまった響とは反対に、和歌はとても愉快そうに微笑んでいる。きっと内緒にしていたのさ響を驚かせなかったからなのだろう。それがわかり、響は苦笑しながら「驚きましたよ、もちろん!」と返事をした。


 「もしかして、漣さんは和歌さんがどんな仕事をしているのか知らなかったのかな?」
 「………はい。作家のお仕事とは聞いたのですが……」
 「なるほど。和歌さんは作家でありながら、舞台の脚本家でもあるんだよ。しかも、手掛けた舞台は全て大人気!制作会社からも役者からもオファーがほしくて仕方がないという有名人なんだ」
 「関さん、褒めすぎですよ。私はシナリオこそ書いてますが、それ以外の演出はほとんど口だししませんから。スタッフが優秀なんです」
 「いやいや。ストーリーや展開がよくなせればお客さんも演者、スタッフも飽きてしまいますからね。和歌さんの作品だからこそですよ」
 「ありがとうございます」


 関と和歌は驚いて固まる響をよそに、演劇の話をすすめていた。どうやら、普段からよく会っていた和歌という人間は、すごい人だったようだ。響は更に驚きを感じて、まじまじと和歌を見つめてしまった。
 すると、その視線に気づいた和歌は響ににっこりと微笑み、響の顔を覗き込んだ。