その日、響が出社をすると、すぐに関に声を掛けられた。


 「おはよう、漣さん」
 「おはようございます、関さん。お話があると聞いたのですが……」
 「あぁ。そうなんだよ。今日は君のお客さんが見学にいらっしゃる予定なんだ」
 「お客様、ですか?」


 響に思い当たる事がなく、首を捻る。この会社に入ってまだ数ヵ月。そんな自分にお客さんと言われても全くわからなかった。
会議室に一人呼ばれたので、てっきり契約の事なのだろうかと思っていたので、驚いてしまった。
 誰が訪れるのか聞こうと思った瞬間に、関の携帯が鳴った。


 「あぁ……取引先からだ。漣さんは普通に仕事をしてもらっていて構わないよ。いらっしゃったらご案内するから」
 「わかりました」


 響はすぐに頭を下げて、会議室から出た。

 関に相手の事を詳しく聞きたかったけれど、仕事が入ってしまったのならば仕方がない。響は不思議に思いながらも、その時に挨拶をすれば大丈夫だろうと、深く考えなかった。