入学式も無事に終え、クラスに馴染み始めた4月中旬。


「栞〜一緒に帰ろ〜」


何時もの様にそんな声と共に栗色の髪をセミロングに伸ばした女子が寄ってくる。
彼女の名は 滝沢 日菜子。
入学当初から色んな人に笑顔で接する彼女はもう沢山の友達が居る人気者。
そんな日菜子は勿論私を放っておく筈も無く、話しかけられた。
どんな事にも興味が無い私も日菜子のペースに連れられ今となっては毎日一緒に居た。


「あーはいはいちょっと待って」

適当に流すと「もう、いっつも適当にして!私怒ったからね!!」と後ろから抱きつかれる。
栗色の髪が頬に当たってくすぐったい。しかも何か甘い苺の匂いがする。


「くすぐったいし重いって日菜子。しかもまたシャンプー変えたでしょ、苺の匂いする」

私がそう言うと私の肩に顎を乗せて笑う。

「へへ〜気付いた?さっすが栞。そういう所が好きなんだよ〜」

スリスリと頬ずりをしながら今度は私の焦げ茶色のボブにした髪を指に絡める。
こういう人懐っこい所を動物に例えるなら圧倒的に犬だろうな。


「ほらほらそういう栞もさ?石鹸のいい匂い。なんのシャンプー?」


「分かったからまず帰ろうよ……教えるからさ」


「え、ちょっとぉ、栞待ちだったよねぇ??」


私の髪を絡めていた日菜子から髪を抜きまだまだ日が落ちない空を横目に教室を後にした。