5歳ぐらいの頃だったかな。

 たしかに、颯ちゃん一家とうちで、一緒にお祭りに出かけて……。わたしがごねて泣きじゃくって台無しにしちゃった記憶がある。

 颯ちゃんが、わたしのためにおもちゃの指輪をくれたことも。

 結婚、指輪。……か。

 お母さんにそんなふうに言われた時、すごく恥ずかしかった。

 だけど、うちのお父さんとお母さんみたいに、颯ちゃんと一緒にずっと仲良くしていけたら楽しいだろうなって、そんなことも思ったなあ。

 あの指輪、どこに行ってしまったのかなあ。お気に入りで、すごく大事にしていたのに。大事だったはずなのに、どうしてなくしてしまったんだろう。

 颯ちゃんは、あの頃から、優しかった。

 なんだか胸が苦しくなって、風邪のせいかもしれないと、わたしは毛布を鼻まで上げた。

 ゆっくり、眠ろう。