お母さんがわたしの頭を撫でた。
 颯ちゃんちのおじさんとおばさんも、なぐさめてくれた。
 お父さんは指輪のかわりに、かわいいお面を買ってくれた。
 だけどわたしは泣き止まなくて、お祭りも、きれいな花火も、ぜんぜん楽しめなかった。

 つぎの日。
 幼稚園から帰ってきたあと。颯ちゃんが、うちにやってきた。

「颯ちゃん?」

 颯ちゃんは赤い顔をしていた。
 玄関先で、

「手、出して」
 って、いきなり言うから。

 言われた通りにしたら、わたしの手のひらに、なにかをぎゅっとにぎらせた。

 そっと開くと、赤い石のついた、指輪。

「それ、やるから。おかしのおまけ」

 びっくりして、目をぱちくりさせた。

 お菓子のおまけの、おもちゃの指輪。
 お祭りの屋台にあった指輪のほうがきらきらしていたけど。
 それでも。わたしはうれしくて、さっそく自分の指にはめたの。

「ありがとう。きれい!」

「……ん」