ため息ばかりついてぼんやりしているように見えるのは、颯ちゃんのほうだ。

 休み時間は、今みたいに、森下くんやほかの友達に囲まれて楽しそうにしているけど、ふとした一瞬、表情が曇る。大きな瞳に影が走る。

「ちょっと、心配で。……颯ちゃんのことが」

 わたしは声をひそめた。

「わたしの考えすぎだったらいいんだけど」

「三崎が?」

「うん。なにか悩みがあるみたいに見えるの。実際、何度かわたしに何か打ち明けようとしてくれたんだけど、いつも途中で口をつぐんじゃって。結局、何も聞き出せてないんだ」

「……それって」

 絵里はなにか心当たりがあるのか、目をまるく見開いた。
 そして、わけもわからず首をひねっているわたしを見て、小さくため息をついた。

「……三崎も苦労するよね」

「どういうこと?」

「ううん。なんでもない。あたしが口を出すことじゃないし」

「何の話? 何か知ってるの?」