ぐったりと力なく倒れこんだ絵里の肩を抱いて運ぶ、森下くんの姿が、脳内にフラッシュバックする。

 あのとき胸に刺さったトゲが、抜けない。
 絵里は具合が悪かったんだし、近くにいた森下くんが助けるのは自然な流れだって、何度も自分に言い聞かせた。
 だけど、どうしてもぬぐいきれない。

「絵里のことも疑ってしまうの。絵里もほんとは、森下くんのことが好きで。ふたりでこっそり会ってるんじゃないかって……」

「由奈」

 そっと、わたしの名前を呼ぶ声。
 低くて、落ち着いた、……優しい、声。
 涙があふれる。

「……っ。わたし、自分が嫌なの。絵里のことを心配する気持ちより、嫉妬の気持ちのほうが大きくて。森下くんと絵里が一緒にいるところを見たくなくて。わたし、わたし……っ」

「由奈」

 大きな手が、わたしの頭の上に乗った。

「颯……ちゃん」

 こんなわたしを、責めないの?
 自分勝手なわたしを。だめな奴だって、叱らないの?