そして、連休に突入した。

 なにも予定のないゴールデンウイーク。
 わたしはお母さんと一緒にホームセンターに行って、夏に咲く花たちの苗を買ってきた。
 中2の妹には、「せっかくの連休なのに花の世話? さびしいねー」なんて、嫌味を言われたけど。いいんだもん、好きだから。

 心をこめて育てているバラの花も咲き始めた。サクラソウの花も相変わらず元気。
 花を眺めたり、お世話をしているときは、心配事もすべて吹き飛ぶ。癒されるんだよね。
 ブルーサルビア、トレニア、ペチュニア……。苗たちを鉢や花壇にせっせと植え付け。

「ふうっ……」

 額に浮かんだ汗を、無意識にぬぐおうとして、あわててやめた。
 手、泥だらけだもん。顔が汚れちゃうよ!

「お疲れさん」

 声が飛んできて、顔を上げると、家の前の道路に颯ちゃんがいた。今、練習から帰ってきたところみたいだ。

 わたしは門扉を開けて颯ちゃんを敷地にまねき入れた。

「おかえり!」

「由奈、ほっぺに土がついてる」

「ええっ」
 すでに汚れてる? さっき顔をぬぐおうとしたとき、うっかりついちゃった?

「うっそ」
 颯ちゃんはにいっといたずらっぽい笑みを浮かべた。

「ええっ! だましたの? ひどいっ」
 
 わたしがむきになると、颯ちゃんはくくくっと体を折り曲げて笑った。
 そんなに笑うことないのに……。