「そうかな? うーん、強くなるっていうのは、その、武道とか、そういう物理的なのじゃなくって。なんだろう、夢中になってることがある人って、芯があるっていうか、そんな風に見えて。わたしもそうなりたいって」

 しどろもどろになって、自分でも何を言いたいのかわからなくなってきた。

 例えるなら、走っている時の颯ちゃん。
 あんなふうに、わたしもなりたい。

 家庭科部でわいわいお菓子を作っているのと、颯ちゃんの真剣勝負は、まるで違うわけだけど。

「強くなりたいとか言ってるけど、由奈はもう、充分強いって」

 絵里がにやっと笑う。

「由奈ね、あたしのこと、守ってくれたんだよ。あたしがちょっと他の子ともめて責められた時にね」

「ちょ、ちょっと絵里っ」

 まさかあの、川原さんたちに絡まれた時の話、ばらしちゃうの?

「由奈ってば、相手の子につかみかかって、『絵里に何すんのよ! 絵里に謝って!』って」