適当に、と言われたけど、絵里と森下くんはそそくさとテキスト類を動かして、颯ちゃんの隣にスペースを作った。
 ここに座れと言わんばかり。

 やっぱりふたり、ぐるになってる。

 颯ちゃんの横に腰を下ろすと、わたしはジュースをひと口、飲んだ。
 炭酸がのどの奥ではじけて、おいしい。

「由奈、サイダー飲めるようになったんだな。昔苦手だったじゃん」

 颯ちゃんが目をまるくする。

「昔って、いつの話してるの? もうとっくに克服してるから、炭酸」

 苦手だったのは、小学校の頃までですから。
 颯ちゃんの中で、わたしはあの頃のまま、成長が止まってるんだろうか……。

 バッグからテキストとノートを取り出して、広げる。

 それからしばらく、みんな、意外にも集中して勉強を続けた。

 時々、颯ちゃんのひじがわたしのひじにぶつかって、そのたびに心臓が跳ねて、なんでもない顔をして意識してないふりをするのが大変だったけど。

 それでも、ひとりで部屋で勉強するのよりはかどった気がする。