何の荷物も持って来ていなかった都筑さんは身軽に立ち上がり、颯爽と玄関へ。
私は癖で見送るために腰を上げようとしたのだが、それは間に合わずに彼はひとりで玄関を出て行った。

……これで終わり?

玄関を背にしたまま、私はカーペットの上に取り残された。
すっかり静かになり、嵐のような気配はなくなった。

ん……ちょっと混乱している。

キスして……それで、結構良い雰囲気だった気がするんだけど。
こっちはそれなりの覚悟決めて、三年間を水に流して受け入れたつもりで……。

このタイミングで、トワイライト・ミシェルが何だっての?
ここまで侵略してきて、結局放置!?
アイディアが思い付いた!?
会社に戻る!?

私の返事は聞かなくていいわけ?
キスしたから当然オッケーだとでも?

バカにしてる!

「……──ふざけんなっての!」

ひとりきりの部屋で口の悪い本音が漏れた。
感情のままに地団駄を踏み、自棄になった私はクローゼットのワンピースをかっさらい、体に当ててみる。

明日の勝負服、絶対に使ってやるから!

姿見に写る鬼のような顔をした私は、ついさっきの自分にまた喝を入れる。
私のことを好きだと言いながら、奴は私を大事にしてくれる気配が全くない。また同じだ。振り回されてる。

ついうっかりキスに応えてしまったけど、もう絶対になびいちゃダメだ。