のはずがない
メガネが曇ってて
その下は濡れてた
「椛…ごめん…」
座ってる椛を抱きしめた
「…来なきゃよかった…
…
…嵩琉に迷惑かけた…」
椛が泣きながら言った
オレの身体に椛の振動が伝わってきた
「迷惑なんか…」
「…こんな彼女がいるって…
…みんなに隠したいのに…
…なんで来たんだろう…
…
ダメって言われたのに…
…
…無理に来て…
…ごめん…ごめんね…嵩琉…」
「ごめん…
違うんだ、椛…
…
…
違うんだ…
オレ、ずっと椛の存在を
みんなに隠してて
友達にも言ってなくて…
…
それには、いろいろ理由があって…
…
…
いろいろって…
ただ…椛がかわいくて…
みんなに知られたくなかった
…
…
だから今日もメガネして来いって
言ったんだ
少しでも椛がかわいく見えないように…
…
けど、椛…」
オレは椛を身体から離して
椛の顔を見た
曇ったメガネがズレてて
涙と鼻水で顔がぐちゃぐちゃだった
「椛…
どんな椛も
かわいくて、みんなに見せたくない
…
椛、ホントにごめん」
椛の目線に合わせてしゃがんだ
「椛、かわいいよ
オレの自慢の彼女…」
椛のぐちゃぐちゃな顔に口づけた
ーーー
椛がしゃくり上げた
「…嵩琉…」
「ん?なに?」
「嵩琉に、鼻水…ついちゃう…」
しゃくりながら言う椛がかわいかった
「うん、しょっぱかった
そんなの、ぜんぜんいいよ
…
椛の全部が好きだから…」



