さくらいろの剣士1

「さくら、身長何センチ?」
「140センチ。」
中学2年生でこれはきつい。
「凌太は?」
「155センチ。」
男子にしては小さいけど、私から見ればけっこう大きいのでバカにできない。
「小さいな、相変わらず。」
「うるさいっ!」
嫌味もちゃんと言ってのけるのだから、うっとうしい。
「凌太はどうして強いの?」
私からも聞いてみる。そう言えば、知らない。
彼はちょっと考えてから答えた。
「兄ちゃんが叶えられなかった夢を、叶えるため。」
あぁ、と思った。聞かなければよかった。
 「兄ちゃんが叶えられなかった夢」
それは「全中3連覇」。
3連覇をかけた夏の大会の直前、正影家は凌太を残して死んだのだ。
表情が暗くなった私を見て、凌太は笑って言った。
「気にするなよ。俺も気にしてないからさ。」
「ホントにごめん。」と私は心の中で謝った。