『ごめん。帰るの遅くなる。』

そんなメールを俺は今まで何度送ったのだろうか。

「わかった!大丈夫だよ。お仕事頑張って」

そんな優しい返事さえも今となっては

「わかった」

の文字だけ。
全ては俺が悪いんだ。


『ただいま…』

疲れと帰宅した安心感からひとつため息をついて
リビングに向かう。
暗いリビングには小さなキャンドルがあって
ゴミ箱に捨てられたメッセージカードには見慣れた字で

『交際4年記念日おめでとう』

と書かれていた。
寝室のドアを開けると既に柚雫|《ゆうな》は寝ていた。
俺は柚雫に近づいて

『ごめん。』

それしか言えなかった。



土曜日の朝。
目が覚めるとパンが焼けるいい匂いがして、ベッドから起き上がる。

久しぶりの土曜日休日だった。


『おはよう、』

「あ、蓮|《れん》くんおはよ」

とつくり笑顔をしている。
これを幸せと呼ぶのだろうか。


俺は昨日のことを謝ろうと柚雫のことを抱きしめた。

『ごめん…昨日』


すると柚雫は俺の事を離して少し俯きながら


『もう聞きたくない…』

と言った。