シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?

「それじゃあ、僕は家に戻りますね」

「……あっ、うん」

 颯太の手前、人称を変えているのが何となく新鮮だ。

「颯太くん、また話そうね? バイバイ」

「うん、バイバーイ」

 颯太が手を振るのを見て、鳴海くんは立ち去った。後ろ姿をぼんやり見つめていると、後頭部の髪に少し寝癖が付いていて、思わず笑ってしまう。

「ねぇ、ママ」

「あ、うん。なぁに? 颯ちゃん」

「あのお兄ちゃんのお名前なんて言ったっけ?」

「……ああ」

 自己紹介されたものの、自分の事でいっぱいいっぱいできっと頭に入らなかったのだろう。

「鳴海くんだよ? 鳴海 仁くん」

「なるみ、じんくん……」

 ふぅん、と呟き、颯太は鳴海くんが帰って行ったアパートを見つめた。

「ジンくんか……」

 真顔でぼうっとする颯太を、抱っこして後ろの座席に乗せる。

 颯太にとって、鳴海くんがどんなお兄ちゃんだと感じたのか聞いてみたいけど……。

 また遊びに行く計画を立ててからにしよう。

 私はそのまま自転車にまたがった。


 *

 夜になり、颯太をベッドで寝かしつけた。ここのところ、寝る前に読んで欲しがる絵本は、いわゆる睡眠を誘う寝んね系の本が多かったのだが、今夜は浦島太郎にして欲しいと言われた。

 颯太にとって、鳴海くんのイメージが良好でそのお話を聞きたがったのだとしたら、嬉しいんだけど……。どうなんだろう?