マンションに着き、エレベーターに乗るが、
それさえ辛い。

早く横になりたい…
19階までがこんなに遠いと感じたのは初めて。

エレベーターが止まるのと同時に部屋に直行し、
ソファに倒れ込む。

"帰りました"

とりあえず和弥さんに連絡をいれる。

和弥"何かあればすぐ連絡しろ。"

返信が来たけど、返す元気はもうなかった。

ソファで1人さっきあの人に言われた事を思い出す。


昔から言われていた事だった。
私は医者と関わっちゃいけない…

なのに…。医者と付き合い、ノコノコと
こういう場に出てしまった。

あの人からすれば、医者を誑かしているように
思われても仕方がない。

思わず着ている服に目がいく。

ー『うん、それにして正解だな』ー

朝、和弥さんに言われて嬉しかった。
せっかく選んで、買ってもらったのに…

ー『男を誑かすには良い格好だもんな』ー

なんで、そんな事いわれてきゃいけないの?

自分だけじゃなく、大切な人も侮辱されている
気がして、悔しくて悲しくて…

これ以上関わっていたら、和弥さんに迷惑がかかる。

あの人は私という存在が周りに知られることを
何より恐れている。それはそうだよね。
不倫して、その子供がいるなんて知れたら
世間になんと言われるか。
それだけじゃない、自分の家庭も崩壊する。
それだけは避けなければ、と思っているはず。
だから私に医者に罹らせず、実の親が
養子縁組を組んだ時も反対してたんだから。

今日の事で、もしかしたら…ある事ない事
言われるかも知れない。
和弥さんの医者としての立場を害すような
事だけは避けないと。

和弥さんの為に、何か出来るほどの術を
私は持ち合わせていない。
ただ一つ出来ることと言えば…居なくなること。






別れるしかないかな。