その姿はまさに、さっきまで同じ家で過ごしていた人のものだった。



「プリンスって……万里くんだったんだ……」



思わず、そんな独り言がこぼれる。

確かに、万里くんはキレイでかっこよくて王子様みたいだもんね……。そ、それにしてもプリンスなんてあだ名がつくって、すごいな……。

1人、感心していたときだった。



「おはよ、桜ちゃん」



背後から声をかけられ、慌てて振り返る。

そこにいたのは、クラスで唯一話す男の子だった。



「西田くん、おはよう」



彼の名前は、西田孝治くん。

紳士的で優しくて、クラスでも人気者。

男の子から嫌われている私にも優しくしてくれる、とってもいい人だ。



「桜ちゃん、今日の放課後って空いてない?」

「放課後……?」

「じつは俺今日、日直で、放課後に担任から雑用頼まれちゃったんだけど、部活の練習試合があって……」