お母さんはお金に目が眩むような人じゃないし、きっとそうだ。私も相手の人の金銭面はどうだってよかったけど、お母さんにこれ以上苦労をしてほしくないと思っていたから、なんだか安心した。
って、それにしても今日からここに住むのかぁ……。
豪邸に住むなんて、幼い頃は夢見ていたけど……なんだか申し訳ない気分。
お母さんが、インターホンを押した。
『はい。椿さん?』
「ふふっ、椿です」
『待っていたよ。どうぞ入って!』
悠里さんの嬉しそうな声が聞こえて、お母さんも口元を緩めている。
ラブラブだなぁ……ふふっ。
新しい生活に不安はあるけど……早く慣れるように、頑張ろう……!
「お邪魔しまーす!」
「お邪魔、します……」
お母さんに続き、私も中に入る。
広い玄関にまた驚きながらも、靴を脱ぎ、家に足を踏み入れたときだった。
「わっ、ほんとに来た……!」

