「そうだね。お父さんは?」
「幼い頃に離婚したので、覚えてなくて……」
「そっかー。ま、俺も母親の思い出とかあんまりないけど」
そういえば……。
「長男さんたちは、2人の再婚に反対しなかったんですか?」
今まで聞いたことがなかったけど……実際はどうだったんだろう……。娘がいるってことも知っていたみたいだし、嫌じゃなかったのかな……?
「え? 何、長男さんって……やめてよ、そんな呼び方。千里でいいから」
全然関係ない言葉が返ってきて、「えっ」と返事に詰まる。
「……千里、さん……?」
恐る恐る名前を呼ぶと、長男さんは満足げに笑った。
「うん。俺も仕方ないから、桜ちゃんって呼んであげる」
仕方なく呼ぶくらいなら、地味ちゃんのままでも大丈夫ですが……と思ったけど、何も言わないでおいた。

