「え? 聞いてなかったの?」



長男さんは、「かわいそー」と言ったけど、感情はこもっていなかった。

むしろ、面白がっている言い方だ。



「会ってからも、反対しようとは思わなかったの?」

「いえ……それは少しも」

「どうして? イケメン兄弟だったから?」



さ、さすが、顔がいい人は自覚があるんだっ……。でも、そんな理由じゃない。

もっと単純な、家族なら当たり前の感情だった。



「お母さんが……幸せそうだったので」



親が子供の幸せを願うように、子供も親の幸せを願うものだと思う。

私は、お母さんが幸せなら、きっとどんなことも否定しない。



「そういうもの?」

「はい」



私はこくりと頷いて、微笑んだ。



「お母さんが幸せなら……それだけで、私も幸せです」



だから……悠里さんには、感謝しかない。