予習しておいてよかった……。
安堵の息を吐いて、黒板に書かれている問題を写す。
「ま、勉強だけが取り柄だもんね」
再び隣から聞こえた声に、今度は無視をしなかった。
「そ、そうだね。勉強なら、西田くんにも負けないよ」
ちゃんと西田くんのほうを見て、そう言った。
なんだか少し、強くなれた気がした。
授業が終わり、自動販売機にお水を買いに行く。
さっきの時間は緊張して、喉が渇いちゃった。
お水を買って教室に戻ると、戸を開けた途端、何かが落ちてきた。
「きゃっ……!」
そこまで痛くはなかったけれど、コツッと頭に当たったそれ。反動でメガネが落ちてしまった。
黒板消しだったらしく、チョークの粉が舞い上がる。
「けほっ、けほっ……」
うっ……な、なにこれ……。
「うわ、桃井さん!?」
「ごめん、間違えて引っかけちゃった……!」

