「桜ちゃんなら、見なくてもわかるんじゃない? 優等生だもんね」



右隣から聞こえる、悪意を含んだ西田くんの声。

どうして、そんな意地悪なことを言うんだろう……。

悲しくて、下唇をぎゅっと噛みしめる。

……黙っててもどうにもならない。

昨日は日奈子ちゃんが助けてくれた。万里くんだって、困っていたらいつも助けてくれる。

でも……助けられてばっかりじゃダメだ。みんなに甘えっぱなしはやだっ……。



「えっと……」



私は黒板に書かれた数式を、いくつもの公式に合わせて計算する。

……わかった、教科書145ページの公式だ。



「x=2a=1/24……です」



答えを言うと、先生が目を見開かせた。



「……すごいな! 公式がわかっていても難しい問題なのに……みんな、桃井を見習えよー! ていうかお前たち、教科書見せてやれ。みんなして忘れたのか?」



……ほっ……。