そう思って、いつも以上に綺麗にノートをまとめる。

5時間目が始まったとき、私はあることに気づいた。



「……あれ?」



教科書がない……。

朝はあったはずなのに……どうして?

カバンの中を探しても、机の中を何度見ても見当たらなかった。

後ろから、くすくすと笑う声が聞こえてくる。

まさか――誰かに隠された、のかな……? そんなことは思いたくない、けど……。



「それじゃあ教科書に載っている公式を参考に、この問題を……桃井、解いてくれ」



黒板に書かれた数式。先生に当てられ、びくりと肩が跳ねた。



「桃井、教科書忘れたのか?」



私の机に教科書がないことに気づいたのか、先生が「珍しいこともあるんだな」とこぼした。



「近くのヤツ、見せてやれー」



近くの、人……。

左隣の人をちらっと見ると爆睡していて、声をかけるのは申し訳なく思った。