「あれ、桜ちゃん。隣だね」



隣から聞こえた声に、反射的に顔を上げる。



「……っ」



西田、くん……? 隣の席……西田くんなんだ……。

あの日以来、西田くんとは話していなかった。

でも、最近私が陰口を言われることが多くなり、西田くんもそれに便乗するよう、大きな声で話しているのが聞こえることがある。

きっと私のこと恨んでるだろうから、今の状況はさぞ楽しいだろうな……。



「それじゃあ、授業始めるぞー」



授業が始まって、私は気にしないように黒板に集中した。



「そういえば、あの噂ほんとなの? 彼氏さん脅して付き合ってもらってるって」



こそっと、そんなことを言ってくる西田くんに、どきりと心臓が音を鳴らす。

……っ、怖い……。

自然と視線が下がり、目をぎゅっと瞑った。



「せ、先生! 西田くんが……う、うるさいです!」



……日奈子、ちゃん?