急いで返事をすると、ゆっくりと部屋のドアが開く。

途端、甘い匂いが鼻孔をかすめた。

桜の手には、お皿が。その上に、パウンドケーキがのっていた。



「あのね……こ、これ、作ってみたの」



……え?



「万里くんにはすごくお世話になってるから、何かしたいなって思って……それで……」



一生懸命話している桜を見ながら、目を見開く。



「焼きたて食べたことないって言ってたから……あの、よかったら……」



俺のために……?

わざわざ、作ってくれたの?

……どうしよう。嬉しすぎて、顔があっつい……。



「ありがと。もらう」



俺は立ち上がって、桜から皿を受け取った。

温かいパウンドケーキを1つとって、口に運ぶ。

口の中に広がる甘味。

それは、今まで食べたスイーツの中で、ダントツの美味しさだった。



「……うまい」