「こんなことを言ってますが、母が家に男の人を連れてきたのは初めてなんです。だから……それくらい大切な人だってことだよね、お母さん」



笑顔で視線をお母さんに向ければ、きゅっと下唇を噛みしめている。



「桜……」

「男性恐怖症なのは本当ですけど、お母さんが選んだ人なら……怖くないです」



正直、それは嘘。

悠里さんのことだってもちろんまだ怖いし、これ以上は近づけない。

でも……ちゃんとお父さんと思えるように、頑張りたい。



「それに……お母さんには世界で一番幸せになってほしいから。もし再婚の話なら、私嬉しいよ」



最後にちゃんと、自分の気持ちを伝えた。



「……っ」



え?

お母さんの目から、ボロボロと大粒の涙が溢れているのが見えて、ぎょっとする。



「お、お母さん、どうして泣いてっ……」