「でも、3人じゃ足りないかしら……」



俺はその間も、ゆっくりとペンケースに筆記用具を片付けている彼女を見つめていた。なんていうか、行動がひたすらゆっくりな気がする。

おっとり系っていうの……? 彼女の周りだけ、時の流れが違うように感じる。



「悪いけど、誰か他に手の空いてる人がいたら、残ってください」



教師の言葉に、彼女が視線を向けた。

残るつもりなのだろうか。だったら、俺も……。

次々と帰っていく生徒たちの中、持ち物を片付けて教師のほうに向かった彼女。俺もそのあとに続いた。



「佐伯くん? 残ってくれるの? それと桃井さんも。ありがとう、助かるわ」



結局、残ったのは遅刻したヤツら以外は彼女と俺の2人だけ。

当たり前か。俺だって、彼女がいなかったら帰ってる。

お人好しっていうか……。心根が優しいんだろうな。困ってる人間がいたら、放っておけなそう。