この世で一番苦手なものと言われたら、迷わず「女」と答えると思う。あまり苦手なものも嫌いなものもないけど、女だけはダメだった。
俺たちを置いて出ていった母親の影響もあるだろうけど、それ以上にトラウマを植え付けられたのは同年代の女子だ。
自分では何がいいのかわからないけど、俺の容姿は世間一般的にいいらしい。
小中の頃は、俺が原因でいじめが起きたり、話したこともない女子生徒の恋人にされていたり、散々な目に遭ってきた。
もう話しても話しても尽きないほど、女関係の嫌な思い出は山のようにある。それ故に、生きていく上で女とはできる限り関わりたくないと思うようになった。
2人の兄弟も同じような経験があるらしいが、逆に容姿を使って女遊びを楽しんでいるらしい。
俺には考えられない。
女なんて、この世で一番面倒くさい生き物だ。
そう、思っていた――桜に出会うまでは。
「再婚を考えてるんだ」
前から付き合っている人がいるとは言っていたから、覚悟はしていた。
兄弟3人リビングに集められたかと思えば、ついにこのときが来たらしい。